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2005年12月

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『夢と魔法の王国』体験記 第2話

(前回のあらすじ)

今年のクリスマス。

家族とディズニーランドに出かけたが、8時すぎにして大混雑。


※詳しくは、コチラ


++++++++++



クリスマスかつ日曜日、ということで、『夢と魔法の王国』には
すでに門の前に長い列ができていた。

当たり前のように皆が皆、総じて楽しげな顔つきである。

クリスマス仕立てのファッション。
ディズニー仕様のコーディネート。

じゃれあい、見つめあうカップル。
幸せを絵に描いたような家族連れ。


そんななか、他の者がそうしているように、僕の奥さんもまた、
一生懸命、『王国』攻略シミュレーションをしていた。

まず、どこそこのファストパスをゲットして、そのあいだに
どこそこに行って、どこそこのなになにを見て、食べて・・・。

彼女にとっても、久しぶりの『王国』体験だった。

友人たちから最近の『王国』事情を事前に仕入れているらしく、
それなりに綿密な計画を立てているようだった。

彼女は「スプラッシュマウンテン」をファーストアトラクションに
指名し、ファストパス獲得に向けて最短距離を模索しはじめていた。


一方、息子はというと。

昨年“シー”に連れてきたときは、まだ幼すぎたためにそこが何処だか
全く理解できていないようだった。
“シー”がどちらかというとアダルト向け空間だったことも災いした。

だが、今回は“ランド”である。

今では彼も“ミッキーマウス”も“プーさん”も知っている。
さぞかし楽しんでくれるだろうと思って疑わなかった。

こちらの思惑どおり、彼は到着するやいなやテンションが高くなり、
ある方向を指差して目をキラキラさせていた。

いったい、なにに反応したのだろう。

親として、興味深く視線の先を追うと、そこにあったのは















ただの連絡バス










地味すぎ。

他にも着目すべきオブジェは、たくさんあったはずなのに。

確かに、息子は無類の乗り物好きではある。

電車、バス、働く車・・・、いつもミニカーを携えている。

クリスマスプレゼントのリクエストも、まさかの

京浜東北線

だった。

しかし、いくら乗り物大好きっ子とはいえ、『王国』に来てもなお、
車に敏感に反応することはないんじゃないか。

その一貫性には我が子ながら、恐れ入った。

息子は、バスのドアが開くたびに「ドアが開いたよ!」と喜んでいた。

あんな風にドアが開くのかぁ、とあまりにも興味津々だったので、
入国したらどのくらい喜んでくれるのだろう、と期待するよりも
もしかしたら今が感動のMAXなのでは、とむしろ不安になった。


そして最後に、僕はというと。

嫌でもテンションが上がりそうなシチュエーションだったのだが、
なぜだか、なかなかその場の空気に馴染めていなかった。

楽しもう、満喫しよう、という気持ちは、あった。

それでも、いっこうに気分が乗ってこないのだ。

余りの人の多さに辟易していたことは否めない。

周りが騒ぎ立てるほど、冷静になっていく自分。

へそ曲がりな性格も、さらにに追い討ちをかけた。

流れてくるエレクトリカルパレードのテーマBGMを耳にしても、
頭に浮かぶのは、『めちゃイケ』の“エスパー伊東”」だけだった。


今日は長い一日になりそうだ。


そんなことをぼんやり思いながら入場を待っていた。

と、僕らの隣の列に、年配の女性の姿を見かけた。

そばには、孫らしき子供たちがはしゃいでいる。

お婆ちゃんは、元気すぎる子供に早くも手を妬いているようだ。


朝早くから、お婆ちゃんも大変ですね。

くれぐれもご自愛ください。


そう思っていると、彼女はおもむろにバッグから小瓶を取り出した。

彼女が手にしたのは、















リポビタンD









ぎこちない手つきで、お婆ちゃんはリポDを一気に飲み干した。

僕は生まれて初めて、老婆がりポDを飲む光景を見た。

王貞治でも、渡辺裕之でも、ケイン・コスギでもなく。

70代過ぎと思しきお婆ちゃんが「ファイト一発!」である。


その姿は、明らかに、これから己の老体に降りかかるであろう、
ファンタスティックな一日への悲壮な決意表明に見えた。


つくづく、夢と魔法の王国である。



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『夢と魔法の王国』体験記 第1話


今年のクリスマス。

僕は5時半に起床した。

家族でディズニーランドに行くことにしたのである。

“シー”には去年行ったが、“ランド”を訪れるのは久しぶりだ。

高校のときの修学旅行で『夢と魔法の王国』デビューした僕は、
その後、学生・フリーター時代に何度か行ったことがある程度。

しかも、それらは決まって平日である。

日曜日、しかもクリスマス当日に、まさか自分が家族を連れて
『王国』を訪問するなど、まったく予想もしなかったことだ。

それだけ時間が流れているという事実に、感慨を覚えると同時に、
少しだけ眩暈がした。

ちなみに、僕らは7時過ぎに横浜の自宅を出たのだが、高速に乗ると
30分やそこらで舞浜に着き、意外と『王国』が近いことを知った。

10年以上も首都圏に住んでいても、まだ修学旅行の頃の知識量と
ほとんど大差ない自分に対して、やっぱり少し眩暈がした。


とにかく、現実の僕は、すっかり一児の父として車を運転していた。


一般道に出ると、公共標識化された看板をあちこちで見かけるようになり、
『王国』の雰囲気を醸し出して、いやでも期待感を煽りはじめる。

途中、誘導スタッフと思しき“キャスト”が僕らの前に現われた。

彼らの掲げる案内ボードに誘導されるままにハンドルを切ると、
少し離れた駐車場に辿り着いた。

どうやら、すでに混雑しているらしい。
時刻は、まだ8時にもなってないのに。


想定の範囲内とはいえ、クリスマスの『王国』恐るべしである。


若干の乗り遅れ感を抱きつつ、急ぎ足でシャトルバスに乗り込むと、
10分ほどで入場門に着いた。

すでに門の前は大混雑していて、誰もが我先にと列をなしていた。


クリスマスだけに、来ている人たちはカップルやファミリーだらけ。

老若男女を問わず、いろいろな人種がごった煮になっていたのだが、
そんな中で、僕はなぜか“悪そうな人たち”が、やけに目に付いた。


たとえば、若めの人たちでいうと。

四六時中、コンビニの前の地べたにじかに座っている女の子や、
5メートルほど歩くたびに、唾を吐かずにはいられない男の子。

たとえば、もう少し年齢層が上の人たちでいうと。

細いタバコを咥えながら、後髪の長い息子の頭をシバく女性や、
サングラスの奥の眉毛を剃って、セカンドバックを抱えた男性。

そんな面持ちの人たちの姿が、やけに多いように見受けられた。


どうしてだろう。


人が集まる場所での、彼らが発するオーラが強いからだろうか。
それとも、実際にその類の人たちの割合が多いからなのか。


そんなことをぼんやり考えていて、僕はあることに気がついた。


彼らの普段着ファッションといえば、白のスウェットが印象的だが、
『王国』を訪問中のいまも、やはりスウェット上下だったのである。

それはまさに、










地元感覚










こぞって皆が皆、多少なりとも自らを着飾って集結するなか、
あくまでも、普段着スタイルを押し通していたのだった。



もちろん、彼らとて人の子である。
気分はすっかり高揚し、あるところでは過剰なまでの『王国』仕様だ。


たとえば、いつもは兄貴分以上にしか使わないはずなのに、
『プーさん』のことは、しっかり“さん”付け。

たとえば、てっきりパンチパーマに失敗したのかと思っていたけど、
よく見てみたら、ミッキーの耳あて。

たとえば、今日ばかりは背中の彫物もミッキー柄なのかもしれない。



それでも“ベースのファッションだけは譲れない”というプライドが、
いつも以上にスウェットの白を際立たせていたのではないか。

僕が、彼らがやけに目についた一番の理由は、たぶん、そこだろう。

そう思わずにはいられない存在感が、確かに、そこにあったのである。


そんなこだわりっぷりに敬服していると、ふいに、対照的なカップルの
甘ったるい会話が聞こえてきた。


「あー、寒いよー」

「ほんと、最近ずっと寒いよな」

「でも・・・雪、降らないかなあ」

「あれ?嫌いなんじゃなかったっけ」

「いつもは嫌だけど、今日なら降ってほしいな」

「なんで?」

「だって、一生の思い出になるじゃん」




クリスマスならではの、ユルいやりとりを耳にした僕は、
列に並んでいる“悪そうな人たち”のスウェット姿を眺めながら、
ある意味、今日はもうすっかりホワイトクリスマスだと思った。




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師走

  • 2005-12-02 (Fri)
  • Note
早いもので、師走である。
師も走る季節なのである。

僕もそこそこ走っている。
どこに走っているのか、解らないけれど。
まあ、走っているうちは幸せなのだろう。
重要なのは、止まったとき何を思うかだ。

懸命に走ってきた自分を褒めてやるのか。
走り足りなかった自分を責めてしまうか。

何を思ったとしても、そこには道がある。
振り返れば、自分が選んできた道がある。

長くても、短くても。
細くても、太くても。
まっすぐでも、曲がりくねってても。

師走だから。
師も走る、この時期だから。
あえて立ち止まってみるのも、悪くない。

振り返って、己の道を見渡してみないか。
違う角度から、道を見直してはみないか。

走りつづけるのもいいけれど。
立ち止まって、ひと息ついて。
振り返ってみることも、だいじ。

そして僕は、思う。



「バックナンバーも読んでね」



更新が停滞気味で申し訳ないが、逆にいまこそ、
過去の文章を読んでいただけると、幸いである。

+++

【 書いたもの一覧 】(2005年7月~)
【 書いたもの一覧 】(2005年1~6月)
【 書いたもの一覧 】(2004年)

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