Home > 2006年04月

2006年04月

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


シンプルにしながら参加中。記事を読んでいただいた上にこのボタンを押してもらえたなら二重のヨロコビです。ありがとう。


  • Comments (Close): -
  • TrackBack (Close): -

カリスマのサイン会(後編)

(前編のあらすじ)

カリスマホスト・芳晶せいじ氏のサイン会に出かけたが、
思いっきり浮いている自分の存在に気づいてしまった―

※詳しくはコチラ

+++


少なからず場違いな存在だった僕は、サイン待ちの列に並んで
氏の著書『1億欲しいか!』を読んで待ったのだが、いつしか、
周りの視線も気にならなくなるほど、読書に夢中になっていた。


この本、お世辞抜きで面白いのである。


波乱万丈な半生や、氏の考え方がぎっしり詰まって内容は濃い。

にも関わらず、口語調のサラッとしたタッチで書かれており、
とても読みやすくて、あっというまに読めてしまう。

そしてなにより、氏の人柄の素晴らしさと芯の強さを感じる。


一気に半分ほど読み進めてしまった頃、気づくといつの間にか
サイン会の順番がすぐ目の前まで来ていた。

慌てて読んでいたページにしおりを挟んで、前の様子を伺う。


僕の前にいた女の子が呼ばれた。

せいじ氏が女の子になにやら語りかけ、本にサインをする。

氏は、サインを終えると女の子に向かって爽やかな笑顔。

しっかり目を見て握手された女の子はポーっとなったまま、
夢見心地の表情で去っていった。



いよいよ、僕の番である。


係員に促されて、せいじ氏の前へ。

せいじ氏は、なんの迷いもなく僕に「ありがとう」と言った。

分け隔てなく、三十路男を迎え入れてくれたことに安堵する。

僕がサイン本を差し出すと、せいじ氏は僕の目を見て言った。


「お名前は?」


一瞬の出来事で、僕には訳がわからなかった。


「は?」


思わず、聞き直す僕。


せいじ氏は、もう一度、優しく僕に問いかける。


「お名前は?」


当然の問いだった。サインをする為の宛名を聞いているのだ。


僕は、やっとのことで返答した。


「ウチダ、です・・・」


ところが、せいじ氏は三度、優しく僕に問いかける。










「いや、下の名前は?」















ポッ















男性に下の名前を聞かれるなんて。


体温が3度ほど上がった気がした。

なんだ、このこそばゆい感じは。

氏にしてみれば、何百人も相手に同じことをしているのだから
当然のやりとりなのだが、僕にとっては、もはや未体験ゾーン。


チェリーボーイ丸出しである。


女子のハートは、こうして射止めてしまうものなのだろうかと、
何気ないやりとりの中に、なんとなく極意を垣間見た気がした。


僕は、どうにか言葉を振り絞って小声で伝えた。


「シンスケ、です・・・」


せいじ氏は、ようやくペンを走らせる。

サインした本を僕に渡すと、なんと手を差し伸べてくれた。

しっかり握手を交わす、カリスマホストと三十路男。


と、そこで僕はようやく本来の目的を思い出した。

雑誌でブログを紹介していただいた御礼を言いに来たのだった。

僕は、せいじ氏の手の温もりを感じながら告白する。


「少し前に『プレイボーイ』で紹介していただいて・・・。
 僕、あのブログの作者なんです・・・」





「あー、『そう、妄想も嘘。』!」




嬉しかった。

せいじ氏は、すぐに理解してくれた。

それも、ただ理解しただけでなく、本ブログのタイトルが


カリスマホストの口から、スラスラと。


これは凄いことである。


なにしろ、本ブログのタイトル、よく間違えられるのである。

「そう、嘘も妄想。」とか、「もう、妄想と嘘。」とか。

ひどいのになると「そう、嘘を申そう」とか間違えられ、

武士が思いつきで嘘を語りだすようなタイトルはなんだ

と問い詰めたくなるほどだ。

本タイトルのルーツは、過去記事を参照していただくとして、
これを機に“うろ覚え”していた方は、ぜひ覚えてほしい。



話が逸れた。


とにかく、すぐにピンときて、スラスラとタイトルが出るのは
本当によく読んでいただいているというなによりの証である。



僕は、ひたすら感動していた。

正直、胸がキュンってなった。

“恋する乙女”に、なっとった。


ほんの数十秒ほどの対面だったが、来て良かったと思った。



帰り際、せいじ氏にこんなことを言われた。



「今日のこと、ブログに書いてくださいよ」



僕は、応えた。



「もちろんです。凄いですもん、この雰囲気」



カリスマホストは、嬉しそうに微笑んだ。

そして、待っていた次のお客さんの相手をはじめたのだった。





そんなわけで。



いまこうして僕は、せいじ氏との約束どおり、書いている。















かれこれ、2週間も前の出来事を。















『そう、更新も遅。』



(了)


シンプルにしながら参加中。記事を読んでいただいた上にこのボタンを押してもらえたなら二重のヨロコビです。ありがとう。


  • Comments (Close): -
  • TrackBack (Close): -

カリスマのサイン会(前編)

生まれて初めて『サイン会』というものに出掛けた。

とはいっても、仕事でサイン会の主催側に居たことはあるし、
有名人にサインをお願いする業務をすることは、ままある。

だが、プライベートで、客としてサイン会に参加したのは
今回がはじめてのことだった。


芳晶せいじ


以前『プレイボーイ』誌で本ブログを取り上げていただいた、
(過去記事『プレイボーイ』参照)カリスマホストである。

氏の著書『一億欲しいか!』出版記念サイン会が開かれる、
という情報を入手した僕は、千載一遇のチャンスとばかりに
会場である新宿の書店へ向かった。

ぜひこの機会に、直接お会いして御礼を言いたかったのだ。

しかし。

開始時刻から30分ほど遅れて着いた僕は、呆然とした。

会場が、思いのほか大変なことになっていたのである。


まず、書店の雰囲気が黄色い

黄色い声援がひっきりなしに飛び交っとる。
携帯カメラのフラッシュが何度も光っとる。
なかにはオリジナルグッズを持つ者もおる。

「せいじさぁぁぁぁぁーん!!」

まるで、アイドルかロックスターかのような周囲の反応に
正直、僕は驚いた。


さらに、書店の雰囲気が黒い

黒尽くめのホストさんが懸命にサポートしとる。
明らかに「慕ってます」的な同業者が多数おる。
なかには『えなりかずき』に扮した者までおる。

「だいひょぉぉぉぉぉー!!」

誰もが氏の存在を尊敬してやまない、そんな周囲の反応に
正直、僕は驚いた。


至るところで『カリスマ』や『セレブ』が溢れる世の中だ。

『カリスマホスト』もメディアが創り上げた虚像なのでは、
と疑心暗鬼になっていたが、それはそれは、見事なほどに





カリスマでした。





だって、なんかもう、取り巻く人々が幸せそうなのである。

男も女も、居合わせた者達が皆、恋する乙女、なのである。


そんな方にブログを紹介いただいたかと思うと嬉しくなり、
僕は急いで書籍を購入し、サイン待ちの列に並ぼうとした。

だが、なんとそこで、係の者に止められてしまった。

「なぜだ?」

はやる僕の気持ちを削ぐように、係員は首を横に振った。

「どうして?」

焦る僕の気持ちをなだめるように、係員は後方を指差した。

そこにあったのは、





ロング・スネーク・ライン





なんと2フロア下の階段まで、長蛇の列ができていたのである。

改めて、カリスマのカリスマたる所以を認識させられた。


そんな訳で、列の最後尾を求めて歩を進めていった僕だったが、
途中で異変に気づいた。

列をなす人々の、僕を見る目がどうもおかしいのだ。

はじめは不思議に思っていたけれど、列の顔ぶれを見るうちに
僕はあることを悟ったのだった。















俺、完全に浮いとる















そうなのである。


サイン会に並んでいる人々は、圧倒的に女子なのだ。

カリスマホストのサイン会だから、当たり前である。


男子もいるが、彼らは黒尽くめ。ホスト業界の方々だ。

カリスマホストのサイン会だから、当たり前である。


そんな状況のなかに、僕は独り、佇んでいたのである。


想像していただきたい。










カリスマホストのサイン会で

三十路男が独り、並ぶ姿を。











確かに、周りに引かれてもおかしくない状況に違いない。

変な勘違いをされても致し方ない、そんな状況である。

僕だって、ジャニーズのサイン会に並ぶ男を見た日には、
たぶん引いてしまうし、良からぬ勘違いをする、と思う。


思いのほか列は長く、僕の後ろにも続々と並んでいた。

僕は、たびたび自分に向けられる好奇な視線を感じつつ、
購入したばかりの書籍を読み耽ることで、気を紛らせた。

そして、一刻も早く芳晶せいじ氏にお会いできることを、
心から願っていた。

いろんな意味で。



(つづく)


シンプルにしながら参加中。記事を読んでいただいた上にこのボタンを押してもらえたなら二重のヨロコビです。ありがとう。


  • Comments (Close): -
  • TrackBack (Close): -

深夜の美容室

同じことばかり嘆いて恐縮だが、仕事で遅くなる日が多い。

もはや、帰宅時は終電かタクシーがデフォルト状態である。

当然、帰宅時間も深夜になり、家族との接触機会は皆無だ。

しかし。

そのおかげ、というわけでもないのだが、深夜の時間帯は、
普段は見かけないような意外な光景を目にすることがある。

そのひとつが、

見習い美容師の練習風景

である。


最寄駅からの帰り道に、いまどきの洒落た美容室があり、
その店は、いつも夜遅くまで灯りが点いている。

終電で帰宅するときでも、たいてい数人の若い美容師が、
客のいなくなった店内でテクニックを磨いている。

終電の帰り道に見かける光景、ということは、必然的に
彼らは、終電を逃してまで技術向上に励む、ということ。


偉いと思う。


見習い美容師の薄給ぶりは、巷ではよく知られた話だ。
時給換算すると、可哀相なくらい安い給料に違いない。

にも関わらず、どんなに遅い時間帯に通りかかっても、
彼らは本当に熱心な表情でマネキンの髪を切っている。


一人前のヘアスタイリストになるために。

いずれは独立して自分の店を持つために。


 
夢と希望に溢れた未来のカリスマスタイリストの姿が、
深夜の美容室のウインドウ越しに映っているのだった。

そんな彼らの奮闘ぶりを見かけるたびに、僕は

「自分も頑張らなきゃ」

という気分にさせられるのだった。



“あの日”が来るまでは―



いつものように、終電の時間まで仕事に追われた日。

最寄駅についたときには、もう午前1時を過ぎていた。

帰り道を歩いていると、例の美容室が見えてきた。

店の灯りは、点いたままだ。


「また遅くまで頑張ってるなぁ」


毎度のことながら、感心しつつ店の前に近づいたとき、
僕は、ある異変に気づいた。

店内から、怒声ともいえる声が漏れ聞こえてきたのだ。


はじめは、先輩が見習いを叱ってる声だと思っていた。

実は過去にも何度か、そんな現場を見たことがあった。


緊張して手つきでマネキンの髪をカットする見習いと、
後輩指導のために深夜まで付き合う先輩スタイリスト。


まるで「美容室版・スチュワーデス物語」かの如く、
厳しい業界で一流を目指す者達の姿をリアルに描いた
ドキュメンタリーそのものだった。


にしても、その日の怒声はいつも以上の勢いだった。


「今日は、特にスパルタ教育だな…」


そう思いながら美容室に着き、ウインドウを覗くと
そこには、信じられない光景が広がっていた。

真っ暗な夜道を照らすように煌々と光る店内には、
見習いと思しき若者が、佇んでいるだけだったのだ。



その彼は、ひとり大声で怒鳴りながら、





しかしながら、単調な手つきで、










あろうことか、















マネキンの頭部に、

ハサミを突き刺しとった。
















ハサミをグーで握り締め、ザクザク、と。










真夜中の、人通りの少ない通り沿いの美容室で、





狂気めいた、青年の主張





僕は、早足でその場を去りながら思った。










「やっぱ、ストレス溜まってんだ…」










あの日以来、残念ながら美容室の前を通りかかっても
「自分も頑張ろう!」と思う気には、なれなくなった。

彼らを見るたびに、僕は強く思う。










「働き過ぎには注意しよう」 と。



(了)

シンプルにしながら参加中。記事を読んでいただいた上にこのボタンを押してもらえたなら二重のヨロコビです。ありがとう。


  • Comments (Close): -
  • TrackBack (Close): -

メモる

なにかにつけてメモを取るようにしている。

理由は、ただひとつ。

いろんなことを、すぐに忘れてしまうからである。

歳のせいだとは思いたくないが、とにかく最近忘れがちで、
日々の予定だったり、約束だったり、誰かの言葉だったり、
それはそれは自分でも笑っちゃうくらい頭に残らないのだ。

もともと人の記憶とは非常に曖昧かつあやふやなものであり、
喜びも、怒りも、哀しみも、楽しみも、感動・感銘の類も、
時間の経過とともに記憶が薄れゆくものではあるのだけれど。

下手すると、メモすることすら忘れてしまいそうになって、
気がつくと、手帳に「必ずメモること」と書いてたりする。





大丈夫か、俺。





思わず脳裏に『若年性アルツハイマー』『メメント』といった
不吉な言葉が浮かぶが、浮かんでくるうちは正常な証拠だろう。


そんなわけで、人は忘れないために、何かに残す行為に走る。

最近では、紙に書く以外にも、写メやらデジカメで撮ったりと
事実をありのまま記録することが、いとも簡単にできる。

それが、便利な世の中なのか、世知辛い世の中かは解らない。

だが、もっとも人間らしい記録手段となると、やはりメモだ。

一時期、明石家さんまが他人の笑いをメモする仕草をしつつ
「いただき」という台詞でさらに笑いを被せていたものだが、
僕は、あの行為こそが真理だと思うのである。



その“瞬間”を忘れないように“すぐにメモる”。



4月も半ばになり、入社・入学式から一週間が経ったいま、
新人の皆さんなどは、何かとバタバタしていることだろう。

特に新社会人は、すぐに何かしらの壁にぶつかると思うが、
若干の先輩として、そして現代社会を生き抜く知恵として、
僕はこの“すぐメモ”を強くお奨めしたい。

僕もフレッシャーの頃、右も左も解らず無力さを感じていた。

だが、仕事を続けていると、いわゆるデキる人達は十中八九、
情報の収集能力と処理能力が優れていることに気づいたのだ。

半端ない量の情報を取り込んで、即座に取捨を選択していく。

肝心なのは、これらの情報を文字通り“すぐに”メモること。

時間が経ってからでは、もう駄目なのである。

「あれ?何を覚えとくんだっけ?」とか言ってるうちにも、
貴重な情報は貴方の真横を素通りしていってしまうだろう。

とにかく、情報のアンテナを張り巡らし、得た情報の中から
必要な情報だけを使いこなしていくことが重要なのである。


僕もまだまだ半人前だが、社会人生活も今年で7年目である。

さすがに、多少の“メモ力”は身につけているつもりだ。

たとえば、さいきんの僕の場合でいうと、こんな風である。



街に出てリサーチ活動をするとき、人の話を注意深く聞く。

メモる。


商談に臨むとき、自分や仲間に対する費用対効果を考える。

メモる。


屋外に出る際は、地図を眺めフィールド調査を欠かさない。

メモる。


野外で珍しい動植物に出会ったら、その特徴を調べあげる。

メモる。


やっかいな取引先と対峙するとき、事前に弱点を洗い出す。

メモる。


休憩したとき、オフのときに、次回すべきことをまとめておく。

メモる。





まあ、要するに















いい歳こいて、ドラクエに夢中














「マスター、夜、闇商人」

「はがねの剣、パルミド」

「南西に地図にはない島」

「エレメ系はテンション」

「ドルマゲス、波動注意」

「ゼシカ探し、ぱふぱふ」
















「ぱふぱふ」て・・・















いったい何をメモっとんのだ、僕は。










結局のところ、“メモる”という行為はとても大事なことだが、
メモる内容でその者の資質が問われることを忘れてはならない。



(了)

シンプルにしながら参加中。記事を読んでいただいた上にこのボタンを押してもらえたなら二重のヨロコビです。ありがとう。


  • Comments (Close): -
  • TrackBack (Close): -

魔法の効力

最近、仕事で南船橋に行くことが多い。

南船橋とは、千葉県船橋市の南のほう、のことである。


ちなみに、僕が住んでいるのは神奈川県横浜市である。

さらにいうと、勤務している会社は東京都港区にある。

つまり、神奈川~東京~千葉と、一都二県にまたがって
あくせく働いとるのである。

ただでさえ、足どりが重くなってしまうような道程なのに、
この南船橋には、さらに甚だ遺憾な出来事があるのだった。


関東圏以外の方には馴染みがないかもしれないので説明すると
東京から南船橋へは京葉線というJRの路線が走っているのだが
その途中に『舞浜』という駅があり、この舞浜駅というのが、

“夢と魔法の王国”の最寄駅なのである。


要するに、あの『ディズニーリゾート』から一番近い駅。


“夢と魔法の王国”といえば、年末にこのブログで取り上げたが
結局、開園前の話だけして王国内の話をまったく書かずに終えた、
という非常に中途半端で情けない過去があったりもするわけだが
『「夢と魔法の王国」体験記 第1話』 および 『同 第2話』参照)
まあ、それは置いとくとして。


この舞浜駅が、非常にやっかいなのである。



この仕事を終えるのは、たいてい午後10時を回る頃だ。

南船橋駅から東京行きの電車に乗ると、車内は空いていて、
疲れきっている僕は、倒れ掛かるように座席に腰を下ろす。

電車の揺れが心地良く、いつもすぐにウトウトするのだが、
ある駅で信じられない数の客が乗り込んできて目が覚める。



舞浜駅である。



“王国”帰りの客が、群れをなして乗ってくるのである。


皆、大きな土産袋を提げている。


皆、満面の笑みを浮かべている。


皆、妙にハイテンションである。


そして。















皆、変な被り物しとる。















いわゆるオフィシャルグッズを身に着けたままなのである。

どいつもこいつも、平気な顔して変な被り物を装着しとる。

変な耳あて、でかい手、奇妙な装飾、ペインティングまで。

電車内で、ちょっとした仮装パーティーが始まるのだった。

普通に考えて、街で見かけたらちょっとどうかと思うような、
そんな品々である。

子供ならまだしも、大の大人が揃いも揃って何をしとるのだ。

そこで僕は、いたって単純な疑問を抱く。





今後、彼等はどこでそれを使うのか





確かに“王国”を訪問した証、楽しい思い出の証、ではある。

しかし、普段の生活に戻れば、押入れの隅のほうに放置され、
かなり虚しいアイテムとなってしまうのではないだろうか。

となると、すぐにもうひとつの疑問がクローズアップされる。










この後、どの時点で被り物を外すのか










舞浜駅から電車に乗り込むときなら、まだいい。

似たような変な格好をした“同志”が大勢いる。

だが、東京駅に到着した後だとそうもいかない。


日本一の巨大駅では当然、“王国”帰りの人口密度も低くなる。

夢は覚め、魔法は弱まり、その代わりに“日常”が彼等を襲う。

サラリーマン、学生、フリーター、夜の仕事の人々・・・

“王国”帰りの人々は、慌しい東京の日常に呑み込まれる。



彼等は、心の中で葛藤する。



「もうそろそろ、潮時なのではないだろうか?」

「しかし、いま外したらこの次は無いんだぞ?」

「さすがに、このままでは恥ずかしくないか?」

「これは“王国”を訪れたという立派な証さ!」

「だがやはり、これ以上、装着し続けるのは…」

「三木さんとの約束を、破るとでもいうのか?」

「僕はよくやったよ。きっと彼も許してくれる」

「三木さんと交わした握手は偽りだったのか?」

「違う!あれは偽りなんかじゃない。だけど…」

「けど、なんだ?熱い抱擁もしたじゃないか!」

「だって…、いまの僕は、どう見ても浮いて…」

「もういい!君の好きなようにすればいいさ!」

「…ごめん。でも君もそろそろ考えたほうが…」

「僕は被り続ける!寝るときだって外さない!」









まあ、どうでもいい話だ。


僕は彼等が被り物を外す“そのとき”に立会いたいのだ。

彼等がかかっていた魔法が解ける瞬間、我に帰る瞬間の、
なんともいえない表情を、目撃したいだけなのである。


そんなわけで、“王国”帰りの人々の動向を観察することが、
長く憂鬱な帰路における唯一の楽しみになっている。



(了)


シンプルにしながら参加中。記事を読んでいただいた上にこのボタンを押してもらえたなら二重のヨロコビです。ありがとう。


  • Comments (Close): -
  • TrackBack (Close): -

Home > 2006年04月

Search
Feeds
Others
あわせて読みたいブログパーツ

Page Top

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。