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20080717

ランチ

誰もがじっと、こっちを見ているのだった。

とあるレストランで。
普通にパスタランチを食べていただけなのに。
客という客の視線をひしひし感じるのだった。
熱視線とはこのことか。

食べてるところをじろじろ見られると居心地が悪かった。
やって来る客は皆、僕を見ながらこそこそ話していた。

もしかして有名人か誰かと間違われてるのか?
えー、やだー、うそー。
そんなに見られたら、さすがに恥ずかしいよ。

あげくの果てには露骨にこっちを指さす客までいて。
「まったく照れるなあ、んもう」
と視線をずらすように顔を背けたら。



メニューの黒板が掛かってた。



席の真後ろに『本日のランチメニュー』があるだけだった。
そういや自分も注文するとき振り返ったかもしんない。
そうか、そっちか、なるほどねー。
と、ほっとしたのも束の間。



なんと、客の一人が本当にこっちに近づいてきた。



もしかして、やっぱり有名人の誰かと間違われてるのか?
えー、やだー、まじでー!?
ほんとに話しかけられたら、さすがに困るよ。

あげくの果てには僕の真横までやってきて。
「俺、サインとか、そういうの書けないよ?」
とっさにそんなことまで考えてたら。





メニューが見にくいだけだった。






僕が邪魔で。





どうやら下のほうがよく見えないらしかった。
僕の頭がネックになってたみたい。

「ヘッドだけどネック」みたいな!!

・・・。

まあ、そんなことはいいとして。

どうりでこっち見てる客が頭を左右に振ってたわけだ。
サライでも歌ってるのかなーと思ってたが、違った。

おかげで僕は首をすくめて低姿勢にならざるを得なかった。
新しく来た客が僕を見つめるたびに。
正確には、メニューを見ようとするたびに。

「なんで俺がそこまで?」と思いつつ前かがみになった。
テーブルに上半身をべたーって。
ただ頭を下げるより、そっちのほうが良いと判断したのだ。

「べたーってするのがベター」みたいな!!

・・・。

まあ、そんなことはいいとして。

繁盛店だったので、しょっちゅう前かがみになってた。
皿に覆いかぶさるようにしてパスタを食べてた。
弁当箱を隠しながら食べる貧乏学生みたいに。

とにかくずっと、こそこそ食べてた。
味はあまり覚えていない。
覚えてないくらいだから、さして美味くはなかったと思う。

「こそこそ食べて味はそこそこ」みたいな!!



み、た、い、な!!



・・・。



(了)




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