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朝の風景

朝の風景


家の近くに、こんな看板標識が立てられている。

「自転車も 飛ばせば怖い 暴走車」

その場所を通りかかるたびに、その表現力には恐れ入る。

「自転車だからって、スピード出しすぎると危ないですよ」
ということなのだが、それにしてもインパクトの強い内容だ。

そして。
さらに問題なのは、そこが至って普通の歩道だということだ。

どこにでもある歩道なのである。
急勾配な坂道でもないし、歩道の幅がさほど広い訳でもない。

ということは、確かに居るのである。

そんな道でありながら“暴走車”と形容する程のスピードで、
周囲の人間を恐怖に陥れてしまう、そんな街のならず者が
間違いなく居るのである。


そこで、僕が真っ先に思い浮かべたのは、こんな光景だった。


まず、脳裏に映し出されるイメージは、朝である。

朝の清々しいひとときだ。
通学途中の、或いは通勤途中の者たちが、歩道を歩く。
その静寂な雰囲気を壊す存在が、突如として現われる。

暴走車と化した、一台の自転車。

周囲に緊張が走る。
道行く人々は、身の危険を感じて道を空ける。
突っ込んでくる暴走車。
乗っているのは学生だ。

女学生である。

リズミカルに、身体が上下している。
見事なフォームの立ち漕ぎスタイル。
目一杯、ワイドなストライド。

短めのスカートが風になびくが、お構いなしだ。
青春のフェロモンを剥き出しにして急いでいる。

女学生は、ふいに道中で佐藤浩市とすれ違う。

それも、ひと昔前の佐藤浩市だ。

佐藤は、寝ぼけ眼で、寝癖のついた髪のまま、通勤途中だった。
目覚めきっていない佐藤は、妻に頼まれたゴミ袋を持ったまま、
うっかりゴミ集積所を通り過ぎてしまう。

近所の主婦から失笑を受け、手にしたゴミ袋に気づく佐藤。
慌てて集積所へ戻ってゴミを出すが、決まりの悪い様子だ。

そこへ、猛スピードの女学生が通りかかる。

佐藤は、思わず怯んで身体を仰け反らせる。
仰け反って身体ごと倒れそうになった佐藤を誰かが咄嗟に支える。

時任三郎(別名:牛若丸三郎太)である。

佐藤より古いが、ふぞろいな時を経てバブル時代を生きる時任。
ジャパニーズビジネスマンかつ“勇気のしるし”の頃の時任だ。

時任の目には、女学生がなにかを咥えているのを見逃さない。

食パンである。

山崎のダブルソフト。
よりによってダブルソフトだ。

パンを口に咥えたまま、自転車を立ち漕ぎで急ぎ行く。
間違いなく、この頃の世代にしかできない芸当だろう。
女学生を象徴するひとつの姿と言っても過言ではない。

それにしても、ふんわりやわらか食感である。
風圧を受けて、ダブルソフトが女学生の顔にへばりつく。

女学生の視界が、一瞬にして遮られる。
ハンドル操作を誤りそうになる女学生。

その刹那、背後から駆け寄った時任が、顔のパンをむしり取る。

視界が開けた女学生は、スピードを緩めない。
なにしろ、彼女は一心不乱に急いでいるのだ。
躍動感に溢れる輝かしい青春の1ページなのだ。
彼女は、後ろ手で「ありがとう」を伝えると、走り去る。

時任は「やれやれ」という表情で女学生を見届けると、
呆然と立ち尽くす佐藤の傍に戻ってきて自分の鞄を拾う。

そこで、あることに気がついた。

てっきり佐藤浩市だと思っていた男は、現在の僕だった。

どうやら、歴代のリゲインCMの世界観に存在しているらしい。

時任はもちろん、佐藤がコマーシャルに起用されていた時期には
リゲインの必要性など全く感じていなかったのに、いまとなっては
週に何本も飲むようになってしまった、31歳の僕だ。

時任は、真っ黒に日焼けした顔に嫌味のない笑みを浮かべる。
そして、虚ろな表情の僕に向かって、優しげに問う。





「24時間、戦えますか?」





いまの僕は、答える。















「戦えるか、ばか」





いまの僕には、もう、自転車を暴走車に変えられるほどの
気力も体力も、ましてや自信など、ない。

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