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たとえば、の話

たとえば、の話

人は「たとえ話」が好きである。

相手に判り易く伝えるために、別の言い方に置き換えるわけだが、
ある意味では、その例える内容と精度の高さが、その人の話術の
バロメーターだといえるかもしれない。


知り合いに、何かにつけて、すぐに例えたがる男がいる。

本人は、ごくごく普通に話しているつもりらしいのだが、
彼にかかれば、すべての物事が例えられてしまうのだ。

しかし、ここが重要なのだが、彼はけっして例える方法が
巧いわけではなく、むしろ下手なのである。

正直、これほどやっかいな存在はない。

本人は得意気にたとえ話をするが、それが例えになっていない。
話はどんどん主旨から離れ、いつまでもゴールに辿り着かない。
にも関わらず、彼は断定的な論調で自信満々に例えるのだった。



「たとえば、美人も鼻くそほじるだろ?」



いきなりのカウンターパンチである。

確かに、美人も鼻くそをほじることだってあるとは思うが、
いきなり、それはないだろう。

そもそも、話の流れからは全く例える必要などない場面だったし、
あえて例えるにしても「弘法も筆の誤り」的な内容だった。

この微妙なズレが、もどかしいのである。

彼は、別のあるときも、こう言い放った。



「たとえば、学生のとき停学になったじゃん?」





いや、そんなことはない。





お前はそうかも知らんが、誰もが一度は学生時代に停学になって、
三者面談受けて親に泣かれて謹慎期間に反省文を書かされたよね、
みたいなことを言われても、ほとほと困るのである。

また、彼の「たとえ話」は、規模が大きいことも特徴的だ。



「たとえば、エベレストは空気薄いでしょ?」



こんな台詞が、味噌汁の具の話をしている最中に出るのである。

結局は「豆腐は絹にかぎる」という話に収まるのだが、
なぜエベレストに例える必要があったのか、首を傾げてしまう。



「たとえば、スイス銀行のガードが堅いようにさ」


「たとえば、インド人がカレー臭いのと同じで」


「たとえば、世界が100人の村みたいなもんで」




もう、何が言いたいのか、さっぱり解らない。


そのくせ彼は、世に存在する「たとえ話好き人間」にありがちな、
“俺、いま巧いこと言った”的な雰囲気を匂わすので、
次第にむかついてくるのだ。



「たとえば、仕事が手につかないサッカー選手、みたいな」


ふふん♪



「たとえば、地に足が着いてないスカイダイバー、みたいな」


ふふん♪



この「ふふん♪」に、時として殺気を覚えてしまうのである。

あまりの無邪気な例えっぷりに、あるとき僕は遂に我慢の限界に達し、
面と向かって本音をぶちまけた。



「お前、いつもたとえ話するけどさ、あれ全然巧くないよ」



彼は黙ってしまった。

しばらくの間、気まずい空気が流れた。

少し言い過ぎたかな、と思っていたそのとき、彼はこう言った。















「たとえば、もうとっくに雨が止んでるのに

 気づくと周りで傘さしてるの俺だけだった、

 ってこと?」
















違うよ。












僕は、このときようやく、彼が例えようのない馬鹿だと知った。


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