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深夜タクシー

深夜タクシー

仕事が深夜に及びがちで、必然的にタクシーで帰宅する機会も多い。

東京から横浜まで、金額にすれば諭吉がおよそ一枚かかる道のりは、
会社の経費とはいえ、非常に勿体無いと思わざるを得ない。

なにしろ、年に数回ならともかく、実際は週に何度もあるのである。

なるべく終電までに仕事を終えて、電車で帰ろうと心がけるのだが、
なかなかそうもいかない。

正直、辛い。

ここまで読んで、「タクシーで帰宅できるなんて羨ましい」などと
思われる方がいらっしゃるかもしれないが、とんでもない話だ。

この深夜タクシーという乗り物、僕には苦痛でしかないのである。



最初に訪れる苦痛は、運転手との会話である。


運転手は、往々にして、やけに機嫌が良い。


それはそうだ。深夜、長距離輸送の“諭吉コース”。上顧客である。

「今日はもう店じまいか」と流しているところへ、僕が呼び止める。

乗車の時こそ、「面倒くせえなあ」という態度がありありなのだが、
ひとたび僕が行き先を告げると、急に舌を出して擦り寄ってくる。

疲れている僕は、シートに埋もれてすぐでも眠りたいくらいなのに、
彼等のテンションは一気に高まり、なにかと会話したがるのだった。


「お客さん、ありがとうございますねぇ」


感謝の言葉は、テンションが高い証拠だ。

「ハウス!」と行き先を告げると、ハァハァ言いつつ自宅に向かう。

まあ、仕事だから当然のことなのだが、上顧客を捕まえた運転手は
“忠実な飼い犬”かのように、僕の疲労困憊具合など気にもせず、
じゃれ合おうとし、甘噛みどころか本気モードでがっついてくる。



会話に生返事で付き合っていると、次なる苦痛が訪れる。


高速道路乗り場である。


ご存知の通り、ETCはすっかり普及していて、タクシーも殆ど、
ETC対応車になっているのだが、そこに意外な落とし穴がある。

タクシー運転手は、料金所の前の遮断機が降りてるにも関わらず、
アクセルを緩めず、スピード全開で猛突進していくのである。

荒野のならず者が、酒場の入口のドアを蹴破る、あの感じ。

もちろん、実際には壊すことなく遮断機は直前で素早く上がるが、
初めて体験したとき、僕は思わず仰け反り、顔を覆ってしまった。

彼等が遮断機の上がるタイミングを熟知するからこその芸当だが、
僕は毎回、絶叫アトラクションに乗っている錯覚に陥るのだった。


さらに言うと、運転手は、かなり飛ばす


深夜。空いている高速道路。仕事はこの客で終わり。諭吉コース。

異常なハイテンションなので、おっさんなのに気分はすっかり、





『頭文字(イニシャル)D』





である。

ほんと、やめてほしい。

緊張の連続で、このとき僕はもう、睡眠どころではないのだった。

むしろ、どんどん目が冴えてしまうのである。

「いま目を閉じると、もう二度と開くことができなくなるかも」

そんな不吉な予感が、脳裏をよぎるのである。



運転手は、ひたすら、僕に話しかけ続ける。

だが、もう何を言っているのかすら、理解できなくなっている。

運転技術を信じない訳ではないけれど、なんか変な汗が出とる。

高揚感に満ちた会話に辛うじて付き合ってはいるが、上の空だ。



窓の外に目を向けると、空はいつのまにか、雨模様。

東京の薄黒い空は、ビル群のネオンに混じっている。

車窓は雨に打ちつけられて、夜は明ける気配がない。



東京は眠らない。 ただ泣いているだけだった。



そして、なんとか堪えていた最大の苦痛が、遂に限界に達した。















運転手さん、口臭キツいよ










まさか、新手の密室殺人か。それとも、ネオナチか。


窓の外に目を向けると、空はいつのまにか、雨模様。

運転手さんの薄黒い息は、僕の溜息に混じっている。

車窓は雨に打ちつけられ、窓は開けられそうもない。



僕は眠れない。 ただ泣いているだけだった。




ときどき「これは、罰ゲームなのではないか」と思うことがある。

業界全体で、運転の講習と口臭の確認を再徹底されることを願う。



(了)
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