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うっかりの春

うっかりの春

うっかりしているうちに、すっかり春である。

気がつけば、明らかに麗らかな春が来ているではないか。

年齢を重ねるにつれて、確実に時の経つのが早くなっているが、
それにしても、今年も四分の一が終了とは、どういう了見だ。

幾らなんでも早すぎやしないか、と誰かに問うてみたいが
そんなことをしている間に、夏が過ぎ秋になりそうで怖い。

まあ、なったものは仕方ないので春を満喫しなければ、と
焦るのだが、一方で僕は春は困った季節だと思うのである。


「雪が溶けて川になって流れてゆきます」

「つくしの子が恥ずかしげに顔を出します」



春といえば、そんな情緒深いシーズンである。

しかも『桜』というキラーコンテンツを持っているので、
他の四季と比較しても大きなアドバンテージだといえる。

しかしながら、というか、恐らくそれゆえに、春は確実に



人々がおかしくなる季節



なのである。


とにかく別れや出会いの多い季節なので感情が揺れやすい。

人間関係が入り乱れ、ついでに頭の中も混乱するのである。


すると、どうなるか。


人前で、感情を表面化させてしまうのである。





つい、うっかり





春の悲劇は、この「うっかり」にある。

誰もが、ついうっかり、自分の世界に浸ってしまいがちなのだ。

いつもなら、自分の感情が出ないようにコントロールするのに、
いまの時期、それが制御不能になる者がやたらと多いのである。

公共の場だろうとお構いなしで、独りで泣いたり笑ったりする。

皆が皆、「うっかり」恥ずかしい自分を見せてしまうのだった。



たとえば先日、電車に乗っていたときのことだ。

卒業シーズン真っ只中であり、送別会シーズン真っ盛りであり、
見るからに、それらしき人々が大勢乗っていた。


ドア付近に立っていたのは、袴を着た女だった。

大学の卒業式だったのだろう。卒業証書の例の筒も持っていた。

春ならではの光景だなあ、と思いながらなんとなく見ていると、
ふいに、外の風景を眺めながら、女は窓を指でなぞりはじめた。

そして。


「ふふふっ」


と微笑みだしたのである。





うっかり





周りに居た者は、誰もが「あ、ちょっとイタいな」と思ったが、
間違いなく、春の仕業である。

春だから、ついうっかり思い出に浸っても致し方ないのである。


かと思うと、気づくと隣に座っていた女は肩を震わせていた。

終始うつむいていた女は、やがて細い指で頬を拭いはじめた。

そして。


「ヒック、ヒック」


としゃくりあげて泣きだしたのである。





うっかり





周りに居た者は、誰もが「あ、たぶん別れたな」と思ったが、
やはり間違いなく、春の仕業である。

春だから、ついうっかり人前で感傷に浸っても仕方ないのである。


終いには、酒臭いサラリーマンの集団がどかどか乗ってきた。

送別会帰りらしき男達は、車内でも容赦なく騒ぎ続けている。

煩いなあと集団を一瞥した瞬間、僕は信じられない光景を見た。

それは。


「フーッ」


集団の一人が、レイザーラモンHGの変装をしていたのだ。





うっかり





さすがに「うっかり」にも程があるが、どうしようもない。

冴えない感じのヤサ男でさえも、春という季節においては、
うっかり、宴会の余興としてハードゲイに変身してしまい、
場の流れで、うっかり、そのまま街を闊歩してしまうのだ。

周りに居た者は誰もが「あ、コイツ馬鹿だな」と思ったが、
春の仕業は、それだけに留まらなかった。

周りに乗せられて調子に乗ったHG男は、近くに居合わせた女に
「セイセイセイセイ」とか言って腰を動かしつつ擦り寄ったのだ。










うっかり










ほどなくして次の駅に着いて、電車のドアが開いたとき、
ホームの向こうに、七分咲き程度の桜並木が見えた。










と、そのとき。















HG男が引きずり降ろされて、

駅員にどっか連れて行かれた。











やがて、何事も無かったかのように、電車は再び走り出した。

車内にはほんの少しだけ、七分咲きの桜の香りが漂っていた。



春は「うっかり」に気をつけたいものである。



(了)
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