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深夜の美容室

深夜の美容室

同じことばかり嘆いて恐縮だが、仕事で遅くなる日が多い。

もはや、帰宅時は終電かタクシーがデフォルト状態である。

当然、帰宅時間も深夜になり、家族との接触機会は皆無だ。

しかし。

そのおかげ、というわけでもないのだが、深夜の時間帯は、
普段は見かけないような意外な光景を目にすることがある。

そのひとつが、

見習い美容師の練習風景

である。


最寄駅からの帰り道に、いまどきの洒落た美容室があり、
その店は、いつも夜遅くまで灯りが点いている。

終電で帰宅するときでも、たいてい数人の若い美容師が、
客のいなくなった店内でテクニックを磨いている。

終電の帰り道に見かける光景、ということは、必然的に
彼らは、終電を逃してまで技術向上に励む、ということ。


偉いと思う。


見習い美容師の薄給ぶりは、巷ではよく知られた話だ。
時給換算すると、可哀相なくらい安い給料に違いない。

にも関わらず、どんなに遅い時間帯に通りかかっても、
彼らは本当に熱心な表情でマネキンの髪を切っている。


一人前のヘアスタイリストになるために。

いずれは独立して自分の店を持つために。


 
夢と希望に溢れた未来のカリスマスタイリストの姿が、
深夜の美容室のウインドウ越しに映っているのだった。

そんな彼らの奮闘ぶりを見かけるたびに、僕は

「自分も頑張らなきゃ」

という気分にさせられるのだった。



“あの日”が来るまでは―



いつものように、終電の時間まで仕事に追われた日。

最寄駅についたときには、もう午前1時を過ぎていた。

帰り道を歩いていると、例の美容室が見えてきた。

店の灯りは、点いたままだ。


「また遅くまで頑張ってるなぁ」


毎度のことながら、感心しつつ店の前に近づいたとき、
僕は、ある異変に気づいた。

店内から、怒声ともいえる声が漏れ聞こえてきたのだ。


はじめは、先輩が見習いを叱ってる声だと思っていた。

実は過去にも何度か、そんな現場を見たことがあった。


緊張して手つきでマネキンの髪をカットする見習いと、
後輩指導のために深夜まで付き合う先輩スタイリスト。


まるで「美容室版・スチュワーデス物語」かの如く、
厳しい業界で一流を目指す者達の姿をリアルに描いた
ドキュメンタリーそのものだった。


にしても、その日の怒声はいつも以上の勢いだった。


「今日は、特にスパルタ教育だな…」


そう思いながら美容室に着き、ウインドウを覗くと
そこには、信じられない光景が広がっていた。

真っ暗な夜道を照らすように煌々と光る店内には、
見習いと思しき若者が、佇んでいるだけだったのだ。



その彼は、ひとり大声で怒鳴りながら、





しかしながら、単調な手つきで、










あろうことか、















マネキンの頭部に、

ハサミを突き刺しとった。
















ハサミをグーで握り締め、ザクザク、と。










真夜中の、人通りの少ない通り沿いの美容室で、





狂気めいた、青年の主張





僕は、早足でその場を去りながら思った。










「やっぱ、ストレス溜まってんだ…」










あの日以来、残念ながら美容室の前を通りかかっても
「自分も頑張ろう!」と思う気には、なれなくなった。

彼らを見るたびに、僕は強く思う。










「働き過ぎには注意しよう」 と。



(了)
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