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かっとなってしまった

かっとなってしまった

世の中、あり得ないこと、理解を超えた出来事が、多すぎる。

新聞は、悲劇・惨劇の記事で埋め尽くされてしまっている。

残念なことに、秀樹がカンゲキする記事は皆無なのである。

むしろ、次から次へと殺人事件がギャランドゥ、なのである。


いったい、どこをどうすればそうなってしまうのか。

いったい、なにがどうなったらそうなっちゃうのか。

面と向かって問うてみたいが、おそらく無駄だろう。


「つい、かっとなってしまった」


殺人者は、決まってこう供述する。



なんだ、それは。



人を殺してしまうほどの『かっ』て、いったいどんな心情だ。

僕には、理解できない。

そもそも、そんな訳のわからない理由をメディアが大々的に
取り上げるからいけないのである。

犯罪を犯したらコレ!みたいな常套句になってしまっとる。

この文句が紙面に載れば載るほど、今後も法を犯す者が供述で
「じゃあ、俺も『かっとなってしまった』でお願いね」とかなんとか
言いやすい環境になるではないか。


そこで、僕は提唱したい。


いっそのこと「かっとなってしまった」以外の心情も、
記事として積極的に取り上げるべきだ、と。


たとえば、こんなのも記事にしてみたらどうなんだ。



ある男が、通っている大学の授業で課題を出されたとしよう。

難しい課題で、付け焼刃の知識ではとても解決できなそうだ。

日曜、男は大学生になって初めて近所の図書館に出掛けた。

受験生の頃、よくこの図書館で勉強していたことを思い出す。

図書館独特の静寂な環境が、程良い緊張感を醸し出していた。

去年までの自分と同じような、受験生がちらほらいるようだ。

「頑張れよ」

少しばかり先輩風を吹かせながら、声には出さず彼等に言う。

そこで、男は自分のなすべきことを思い出す。

「そうそう、俺も頑張らなきゃ」

さすがに大学に入ると、専門的な学問だけあって骨が折れる。

目的のコーナーに辿り着き、分厚い本の背表紙を次々なぞる。


そして。


これだと思った本に手をかけた瞬間、

同時に、別の誰かの手が触れた。


「あっ、ごめんなさいっ」


その手の主は、小さく驚いた声とともに素早く手を引っ込め、
男も、とっさに手を引っ込めてしまった。

お互い手を引っ込めたとき、思わず相手と目が合った。



同じクラスの女の子だった。



毎日のように顔を合わせてはいるが、まだ話したことはない。

教室で見かける彼女は、いつもかなり派手な格好をしていた。

授業中はかったるそうな顔で、常に携帯電話をいじっていた。

入学して一ヶ月だというのに、やる気ない素振り満載だった。

そんな彼女が、おそらく男と同じ目的で、図書館に来ていた。

しかも休日だからか、Tシャツにジーンズというラフな格好で、
おまけに、いつものキメキメのメイクではなく、すっぴんだ。


お互いを認識した瞬間の、「あっ」と声を出すタイミングも
同じだったので、二人の間には変な照れくさい空気が漂った。

ノーメイクを見られたくないのか、恥ずかしげな彼女の顔は、
素朴で純粋な女の子そのものだった。

その後も、お決まりのように「どうぞ」とお互いが譲り合い、
二人はなんとなく気まずそうに、ぎこちなく微笑みあった。

結局、彼女は本を棚から素早く取って、男に無造作に渡すと
そそくさと逃げるようにその場を去っていった。

男は、慌てて彼女の背中に向かって言った。


「ありがとう」


すると彼女は、俯き気味に振り向いて、小さな声で返答した。


「終わったら、次、貸してね」


男には、その時の彼女は少し顔を赤らめているように見えた。


男は悟った。


大学での彼女は、ただ無理に虚勢を張ってるだけなのだ、と。


男は感じた。


彼女の意外な一面を垣間見て、思わず心が動かされたことを。



そして男は後日、親しい友人に、当時の心情をこう供述した。




















「つい、ぽっとなってしまった」















殺伐とした現代においては、こんな記事を読んだほうが
ばかばかしくとも、よほど慰められるというものだ。

僕は、こんなふうに胸がキュンキュンなってしまうような
「つい、ぽっとなってしまった」記事をこそ、




















ていうか、長い。









無意味に長すぎて、皆さんから「つい、かっとなってしまった」
とか言われそうだが、要するに僕は、たった一日でもいいから
平和な記事だけで構成された新聞を、読んでみたいのである。

そして、読み終えたとき、こんな台詞を口にしたい。


「つい、ほっとしてしまった」


と。


(了)
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