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天丼

天丼


先日、仕事の合間に天丼屋で昼飯を食べたときの話である。

勤務する会社の近所にチェーン展開している天丼屋があり、
さくっと食べたいときに利用するのだが、あ、ここでいう
“さくっと”というのは明らかに“短時間で”的なことを
若者的な言葉で置き換えているだけで、別に天婦羅の衣が
“さくっと”しているわけではないのだし、考えてみれば
僕はもう若者ではないので、そういう言葉を発することは
似つかわしくないかもしれないなどと思いつつ、それでも
本心を言わせてもらえば、やっぱり天婦羅の衣はできれば
“さくっと”している方が好きなのだけれども、この店の
天丼の価格を思えば分相応の食感しか味わえないことなど
ずいぶん前から重々理解しているのであり、結局のところ、
それを承知しながらこうして足を運んでいるということは、
そのときの僕は食事の充実感や満足感を求めてはいなくて、
むしろ時間の節約を欲している、ということに他ならない。


などと保坂和志っぽく書き始めてみたが、所詮は真似事だ。

のっけから馬鹿げた文章を読まされて疲労感を覚えた方に、
まずは深くお詫び申し上げたい。


というわけでスタートダッシュに失敗した感が否めないが、
要するに時間がなかったので安い天丼屋に行ったのである。

そこはファストフード然とした店で、店員も外国人ばかり。

まったく、この国のファストフードチェーン店はいつから
アジアンテイストに染まってしまったのだろう。

悲しいほどに東京都港区にあるファストフード店の接客は
カタコトなのだった。


スローフードで部数を伸ばした『ソトコト』とは大違いだ。


それでも、丁寧に接客していただければ「頑張ってね」と
異国の地で働く彼等にエールのひとつも贈ろうと思うのに、
僕は、なかなかそんな気持ちになれない。

なぜなら、彼等は総じて


無愛想だから。


もちろん外国人労働者がすべて当てはまるわけではないが、
接客に対する考え方の違いなのか、日本をなめているのか、
日本人ではあり得ない接客態度を彼等は平気でしてしまう。


実際、僕の元へオーダーを取りに来た中年女もそうだった。

彼女はグラスを無造作に置くと、こう言った。





「注文、ナニスル?」





胸の名札を見るまでもないカタコトだった。

僕は、やれやれと思いながら彼女に上天丼を注文した。

そして、彼女がコップを置いた際に零れた水を拭いた。


すぐに料理が来るはずだからとぼんやり待っていると、
なにやら厨房から大声が聞こえてきた。



「テンチョー!」



店内の箸を全部止めた声の主は、例の中年女店員だった。

さっきまでレジにいた同じく外国人らしき若い女を従え、
店長だと思われる初老の日本人男性に詰め寄っている。

僕の天丼を作るべき店長の手は、すっかり止まっていた。

中年女は店内の様子を気にすることなく、まくし立てる。

「テンチョ、ワタシ、シフト入れないで言ったでショ!
 モリオカさん来たら、ワタシ、すぐ帰るからネ!
 ワタシ、アノ人は無理ヨ。チョウさんも同じネ!」


若いチョウさんが、隣で控えめに頷いている。

中年女の物凄い剣幕に、店長は困惑顔で固まったまま。

中年女は続ける。

「モリオカさんと一緒いたら、ワタシとチョウさん、
 働く人数入らないヨ。ワタシら、スグ帰るヨ!」


どうやら、彼女達はモリオカさんと相性が悪いらしい。

なにがなんでも、一緒に仕事をしたくないようである。

彼女は感情をあらわにして、店長に訴えてかけていた。

途中、聞き取りづらい言葉も多々あったが、とにかく
言いたいことを言いたいだけ、伝えているようだった。


たしかに、自分の意見を相手にぶつけることは大事だ。

先日、現役を引退した中田英寿もしきりに言うとった。

彼女みたいな人間が、日本代表には必要かもしれない。

接客態度はバツだが、日本人にはないメンタリティだ。


しばらくの間、彼等のやりとりを聞いて、僕は思った。















天丼、まだ?















僕がこの店に来たのは食事をさくっと済ませるためだ。

そんな下世話なやりとりは営業が終わってからにしろ。

いや、せめて、オレの上天丼を作ってからにしてくれ。


中年女は自分が勤務中であることを忘れているようだ。

そんな分際でモリオカさんと一緒に働きたくないとか、
偉そうなこと言うなよ。むしろ、モリオカさんに謝れ。


いや、せめて、早く自分の仕事に戻ってくれ。


カタコトでもソトコトでもいいから。


早く天丼を作ってくれ。


時間がないんだ。


早くしろ。


早く!


と、そこで携帯電話が鳴った。無情のホイッスル。

会社からの呼び出し。午後の打合せに出なくては。


厨房で続く喧騒を横目に、僕は諦めて席を立った。

いったい僕は何のために天丼屋へ来たというのか。

衣もさくっとしておらず、たいして美味くもない、
そんな天丼を食べることすら叶わなかった。


虚しさとやり切れなさが込み上げて、僕は思わず、
天井を見上げた。















いまうっかり「てんどんをみあげた」と読んだ貴方、
中年女はたぶん中国人なので、漢字を教わりなさい。

で、そのかわりに接客のイロハを教えてあげなさい。


(了)
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