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残念な光景

残念な光景

日々の生活のなかで、“残念な光景”に出くわすことがある。

ありふれた、よくある日常のひとこまに過ぎないのだけれど、
偶然にも遭遇する羽目になって幻滅したり、がっかりしたり。

自分が「こうあるべきだ」と思う規格を大幅に下回る映像が
突如として現われたとき、人はそれを“残念な光景”と呼び、
想像もしなかった意外な事実として、心に刻まれるのである。



終電間近の電車での出来事だ。

仕事を終えて電車に乗ると、若くて綺麗な女性が座っていた。

本当に綺麗な人だった。

「女性」と書いて「ひと」と呼びたくなる、そんな類の人だ。

乗車の人波に押され、導かれるように彼女の前に辿り着くと、
僕は持っていた雑誌を広げつつも、その美貌が気にかかって
チラチラと彼女を見てしまっていた。

ファッションモデルか。それとも、アイドルとか女優の卵か。

勝手に職業を想像したりしていた僕の視線に気づくことなく、
文庫本に夢中の彼女だったが、やがて目がとろんとしてきた。

どうもおねむの時間になったようで、文庫本を手にしたまま、
ついに彼女は静かに瞳を閉じた。


ドキッとした。


「ウチダが~、電車で~、絶世の美女に~、出会った~」


そんな調子で下條アトムのナレーションが聞こえてきそうな
絶妙な表情は、まさしく“眠れる電車の美女”だった。


だが、いくら観賞に値する美女を目の前にしたからといって
あんまりジロジロ見るわけにはいかない。僕にも分別はある。

僕は雑誌に視線を戻し、残りの乗車時間をやり過ごしていた。


それから10分ほど経った頃、僕はある異変に気づいた。

電車に揺られながら雑誌を読んでいると、その揺れに合せて
「ゴツ、ゴツ」となにやら鈍い物音がするのだ。

そしてその物音は、明らかに前方から聞こえていた。

僕は前の席を見て、思わず言葉を失った。










美女が爆睡してヘッドバンキング










ついさっきまでは“眠れる電車の美女”だったはずの彼女が、
魂の抜け殻の如き阿呆面で頭を窓に打ちつけていたのである。

キューティクルな黒髪は乱れ、口元はだらしなく開いていた。

おまけに、閉じたはずの瞳まで半分開いて白眼がチラリズム。


「あられもない姿」とは、まさにこのことである。















一瞬にして僕を虜にした貴女は

どこへ行ってしまわれたのか?
















目を覚ませば、すぐにさっきまでの美貌に戻れるのだろうが、
なんだか永遠に醜態を晒すのではと思うくらい爆睡しとった。

残念だ。

残念な光景を前にすると、下條アトムとはしゃいでいた僕は、
もうそこには居なかった。

なんともいえない想いが、ただただ宙を彷徨うばかりである。


もちろん、彼女に罪はない。

彼女とて、無防備な姿を曝け出すのを望んでいたはずもなく、
正気に戻った後、睡魔を恨み、後悔し、そして恥じるだろう。

しかし、彼女の内に潜むダークサイドを覗いてしまった僕は、
現実を直視して嘆くしかなかった。


さらに不幸なことに、彼女は頭を上下左右に振り回した挙句、
隣に座っていたエロ親父っぽい男の肩に預けてしまっていた。

正気ならば決して近づかないような男に寄り添う、元・美女。

男もさりげなく装いつつ、たぬき寝入りで彼女に寄り添った。


残念なカップルの誕生、である。


エロ親父は途中の駅で一旦は腰を浮かしかけたにも関わらず、
隣の彼女をチラ見し、そして腕時計を確認すると座り直した。

たぶん自分の降りるべき駅を、わざと乗り過ごしたのだろう。

エロ親父は、にやけ顔で確かにこう呟いた。















「・・・延長しちゃおうかな」















“残念な光景”とは人間の業を目の当たりにすることでもある。



(了)


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