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シナモン

シナモン

僕はシナモンが好きだ。

数ある香辛料の中でも独特の甘味と微かな辛味が融合した味わいが堪らない。まったく、あの鼻を撫でるような芳醇な香りときたら!どうにも異国情緒を感じさせてくれるじゃないか。かつてこれほどまでに素晴らしいスメルが他に存在したでしょうか?


僕が初めてシナモンと出会ったのは忘れもしない、かなり昔のことだ。

小さい頃、親の行きつけの喫茶店に一緒について行くと決まってトーストを注文してくれた。

分厚くて、カリッと焼けていて、バターがたっぷり塗ってあり、仕上げにシナモンシュガーが大量に振りかけてあるシナモントースト。

これがもう、絶品で。デラ絶品で。

以来、僕にとってトーストといえはジャムではなくて、シナモン。

シナモン、シナモン、の日々。

シナモンパウダーを舐めては悦に入ったり、砂糖の分量を調整しながらマイシナモンシュガーを作ってみたり。

いわば、若きシナモニストだったのである。


だが、そんな僕にも大人の階段を登る日が来るわけで、大学生になったある日、衝撃的な事実を知ることとなった。

それは、当時まだ付き合いはじめて間もない女の子と、デートの途中で通りかかりの喫茶店に入ったときのことだ。

どうも珈琲専門店らしくメニューには豊富な種類の豆の銘柄が並んでいたのだが、ふとその中に『シナモンコーヒー』なる文字を発見した。

まだお互いに緊張気味で会話も探り探りの段階だったので、話のネタになると思った僕はどんなものか知らぬまま意気揚々とオーダーした。

「俺、シナモンが好きでさー」

「へー、そうなんだー」

「シナモンって、ほら、すごく香りがいいだろ?」

「うんうん、料理するときたまに使うよー」


取りとめのない会話をしているうちに、ウエイターがやってきた。

目の前に置かれたそれは一見、なんの変哲もないコーヒー。

とりあえず、一口だけ飲んでみる。

シナモンの風味がほんのり漂った。


ほう、これがシナモンコーヒーとやらか。


だが、思い描いていたほどの香りは感じられなかった。

と、カップの傍に気になるアイテムを発見した。

木の皮を丸めたような変な棒が、添えられていたのだ。

僕は、一瞬たじろんだ。





この棒は、なんぞや?






当時の僕は『シナモンスティック』という代物を全くご存知なかった。そもそも僕はずっと“シナモン=粉”だと思っていたのだ。

向かいを見ると、普通のコーヒーを頼んだ彼女の手元にはない。

この棒は、シナモンコーヒーを注文した僕だけのオプションだ。

てことは、あれか?

これを使って、何かしろってことか?


おもむろに棒を手に取ってみる。

鼻に近づけると、シナモンの香り。

なるほど。

この棒を利用してコーヒーを飲むことで、コーヒーがシナモンコーヒーへと正式に昇華するわけだな。


さて。

どうやってシナモンコーヒーたらしめるべきか。


棒よ。

お前さんは、いったいどんな任務を背負っているんだい?


そもそも、この棒は食べられるのか?

硬そうだけど食べても大丈夫なのか?

ちょいちょい、かじったりするのか?

いや、待てよ。

なんかタバコっぽい雰囲気もするぞ。

もしかして吸うのか?

コーヒー飲んで、棒吸って、なのか?

そうやって、交互に嗜むものなのか?


彼女の手前、下手なことはできないと思った僕は、正しい解を導くために考えた。そして、考えに考え抜いた末に出した結論がこれだった。















棒をコーヒーに浸しながら舐め回す















コーヒーの中で棒をちゃぷちゃぷ泳がせてしゃぶるのが、最もシナモンの香りを強烈に感じる気がしたのだ(最初は食べるのだと思ったけれど少しかじってみたら口内に異物感を感じたので速攻で却下した)。

僕は、とにかく必死だった。

彼女とのトークを積極的にリードしつつ、未知の飲料とも格闘するというハードワーク。慣れた手つきを装ってひたすら棒をねぶりながら、僕は懸命に話しかけていた。

いま思えば、彼女の笑顔が終始ぎこちなかったのは緊張のせいだけじゃなかったのかもしれない。いや、きっと見て見ぬふりをするのに神経を使っていたのだと思う。

その証拠に、僕がシナモンスティックをレロレロやっているところへウエイターがやって来て、



「お客様、そちらはかき混ぜるのにお使いください」



と160キロのストレートで指摘されたとき、彼女はなんだか僕に申し訳なさそうにしていた。

その後、瞬間的にマズいと思った僕が、



「あ、ああ!そうそう、その手があったね!」



などと意味不明な弁解を続けるのを見るうちに、彼女はようやくホッとした表情になり、初めて声に出して笑ってくれたのだった。





まあ、要するに。


ベタな話だけど『恋にはスパイスが必要』ってことで。


ここはひとつ、よろしくどうぞ。



(了)


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