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老婆は小刻みにビートを刻む 4

老婆は小刻みにビートを刻む 4

(前回までのあらすじ)

未読の方は、とりあえず読んでいただきたい。

第1話 / 第2話 / 第3話

+++


こってりなのか、あっさりなのか。
いったいどんな味か興味津々な『豚肉キムチ炒め定食』はさておき、
とりあえず注文は、完了した。

料理を待つあいだは、まるで最後の審判を受けるような心地だったが、
ほどなくしてギョーザが運ばれてきた。

「はい、ギョーザね」

ほう。
分厚い皮が特徴的で湯気が立って美味そうだ。

と、グラス同様に小刻みに揺れる餃子の皿ばかりを見ていて
気づかなかったが、運んできたのは、








さっきとは、別の老婆。







なんと、さっきまで大女将と呼んでいた老婆とは違う老婆だったのだ。
これには、ただただ驚いた。
背格好も雰囲気もいっしょだが、明らかに別人なのである。
それまで気づかなかったのだが、奥に部屋(たぶん住居空間)が
あるらしく、先程までの大女将は、そこに引っ込むところだった。

なぜか、選手交代。

「老婆に代わりまして、老婆」である。

老婆、初老のおばちゃん(調理担当)と来て、また老婆。







なに、この店。






もはや、仮説の立てようもなかった。
さっきの老婆ですら、無理やり自分を納得させるために
ストーリーをひねり出したようなものである。
新たに別の老婆まで出現されると、もうお手上げである。

この後、何人の老婆が出てくるか解らないので、
とりあえず、これまで大女将と呼んでいた老婆を『大女将A』とし、
この新たな老婆を『大女将B』と呼んで対応することに。


新しく登場した大女将Bも、大女将Aに負けず劣らず、
息子に対して、攻めのコミュニケーション術を駆使してきた。

「小皿を用意しましょうねえ」
「お箸はもう使えるのかい?」
「スプーンは使えるんだねえ」
「まあ、上手に食べるのねえ」


もはや、息子にいつもの食欲は無かった。

そして僕ら夫婦もまた、かつて感じたことのないような
変な居心地の悪さを感じ続けていた。

なにしろ、僕ら以外に客はいない。
来る気配すらない。
来たのは、チャーハンが出来る頃に、大女将Aが戻って来ただけだ。
そう、途中から


老婆2トップ体制


なのだった。
二人の老婆が、僕らのテーブル最前線に常に張っている状態。
両老婆の視線が、なんとも食事しにくい環境を醸し出していた。

最後にタンメンが運ばれてきたときなどは、

「熱いからね~、こぼさないように気をつけてね~」

と大女将Aが注意を促していたが、







大女将Bが持ってくるときが、

一番危なかった。







そんな見事なコンビネーションの前に疲労困憊になった僕らは、
ひととおり食べ終えてしまうと、ほとんど余韻を残すこともなく
そそくさと勘定を済ませ、店を出た。

帰り際、両老婆はご丁寧に入口付近にまでやってきて、
「また、きてねぇ」
と、お一人当たり、3回ずつ仰りながら、僕らを見送った。

僕らは、その度に息子に手を振らせなければならなかった。


帰り道、僕は奥さんに 「ごめん」 と謝った。
なぜ謝るのか自分でも解らなかったが、とにかく謝っていた。




正直言って、僕はあの店にはもう行かないと思う。


入店前の最大の関心事だった“味”については、お陰様でというか、
母親が晩御飯で作る中華料理みたいな感じで、ごく普通だった。
それはまさに、おばちゃんが作る手料理そのものであり、結局
金を払って食べるほどのものか、という疑問は残るものの、
食べられない、という代物では無かった。


厳しいことを言うようだが、僕が二度と行かないだろう理由は、
料理云々の前に、やはり老婆2トップの存在に因るところが大きい。

ご老人独特の、厚いおもてなし、お気遣いだったのだろうが、
肝心の客である僕らは、全然落ち着くことができなかった。

また、残念ながら、お二人とも飲食店で給仕係として働くには
いささか御歳を召しすぎの印象を受けた。

事あるごとに小刻みにビートを刻んでいては、
業務に支障を来たしていると感じざるを得ない。


今後の店舗経営を、真剣にお考えになるのであれば、
お二人とも引退された方が良いのではないだろうか。



もちろん、老婆心から言わせてもらえば、の話である。

(了)
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